訳あって、ある橋の下で浮浪生活をしていた元詐欺師の大庭三吉は、友の幽霊が見え会話ができるという不思議な男・深川啓介と出会った。深川は、傍らにいる戦友の幽霊の身許を捜していた。幽霊は昔のことは何にも憶えていないのだという。その話から金儲けの食指が動いた大庭は、さっそく深川を連れて、家族のいる海沿いの町・北浜市へ舞い戻って来た。大庭の帰郷を聞きつけた地元新聞社の鳥居弟や選挙が近い市長らは慌てた。彼らは昔、或る偽証事件で大庭と関わりがあり、弱味があったからだった。人殺しの嫌疑のあった大庭は事件のほとぼりがさめるまでの1年間、町を出る約束を鳥居弟とし、そのまま8年間行方をくらましていたのだった。鳥居...
訳あって、ある橋の下で浮浪生活をしていた元詐欺師の大庭三吉は、友の幽霊が見え会話ができるという不思議な男・深川啓介と出会った。深川は、傍らにいる戦友の幽霊の身許を捜していた。幽霊は昔のことは何にも憶えていないのだという。その話から金儲けの食指が動いた大庭は、さっそく深川を連れて、家族のいる海沿いの町・北浜市へ舞い戻って来た。大庭の帰郷を聞きつけた地元新聞社の鳥居弟や選挙が近い市長らは慌てた。彼らは昔、或る偽証事件で大庭と関わりがあり、弱味があったからだった。人殺しの嫌疑のあった大庭は事件のほとぼりがさめるまでの1年間、町を出る約束を鳥居弟とし、そのまま8年間行方をくらましていたのだった。鳥居弟は部下の箱山記者に大庭の動きを見張らせた。
8年ぶりの妻・トシエと娘・ミサコとの再会も早々に大庭は深川と共に、「死人の写真 高価買います」というビラを町中に貼った。深川によると、彼自身には友一人の幽霊しか見えないが、他にも多数の幽霊たちが後をついて来ているのだという。さっそく翌日、死んだ義弟の写真を売りに市民A(主婦)が来た。大庭は死人の特徴を示す「身の上調査票」を客に書かせ、金は1週間後に現金で払う約束の「写真預り証」だけ渡した。そんな調子で集めた写真と幽霊たちを照合する会も夜に行なわれ、深川は幽霊一人一人の戸籍のようなものを作り出した。スパイをしているところを見つかった記者の箱山はその会に同席し、宣伝記事を書くことを約束させられた。
「家なき幽霊に、愛の手を!」という見出しの新聞記事で幽霊騒動はラジオも取材申し込みに来るほどの反響を呼んだ。義弟の幽霊が戻ってくるとまずいことになる市民Aが写真を取り返しに来たが、大庭は逆に高値で買わせた。しだいに写真買取の周旋屋が町だけでも百人以上となり、あちこちで写真泥棒も出た。写真を盗まれた遺族が大庭の店へ買戻しに来たり、その他にも幽霊講演依頼や探偵依頼、身の上相談、病気治療など幽霊商法は大繁盛となった。大庭は市長や鳥居兄弟らを理事にした「幽霊後援会」を設立させた。そんな折、死んで幽霊になった後の言伝まで遺書に書き、実験的に崖から飛び降り自殺する男まで現われた。大庭はそれをヒントに幽霊保険や幽霊服のアイデアが浮ぶが、記者の箱山は大庭や鳥居らに、「幽霊なんて、いやしない」と苦言をさした。箱山は新聞社を首になった。
自ら幽霊後援会の二代目会長となった幽霊は、ラジオの生放送中に次は市長になりたいと意思表示し、大庭の娘・ミサコと結婚したいとまで言い出した。いやがるミサコは人殺しの目撃者の件で父親を脅迫した。困った大庭と市長は幽霊服のファッションモデルの女に幽霊を誘惑させようとした。そこへ吉田という名字の老婆(深川の母親)と、本物の深川啓介がやって来た。戦友の幽霊は生きていたのだった。自分が深川だと思っている吉田は、戦時中の南方のジャングルで自分のせいで戦友(深川)が死んでしまったのだと思い込んでいたのだった。飢餓状態のジャングルで精神的に混乱し苦しんだ吉田は、頭の中で本物の深川と自分を入れ替えて記憶したまま戦後を迎え、その後、精神病院から飛び出していたのだった。その話を本物の深川から聞いた吉田は、鏡を見せてくれとミサコに頼んで自分の顔をまじまじと見つめた。
自分が吉田で、戦友が深川であることを認識した吉田の傍らから幽霊が消えた。幽霊がいなくなり慌てる一同に、「呼ばなくたって、ここにいるよ。幽霊はここにいる」と本物の深川が言った。本当は幽霊と離れたかった深川(吉田)と、深川が幽霊から解放されることを願っていたミサコはお互い気持が通じ合い、本物の深川や、互いの親たちと一緒に幽霊会館から出て行った。幽霊がいなくなり、大庭に見捨てられた鳥居兄弟と市長らは怒るが、モデル女の、「どうせはじめっから、いやしなかったんでしょう。…いることにすりゃいいんでしょう?」という言葉で活気づき、そのまま幽霊商売を続け出した。そのことを箱山は大庭たちに教え、目撃者の件で市長たちをひっくり返せばいいと正義ぶるが、大庭の妻・トシエは、幽霊後援会の理事は夫だと居直った。トシエは、実は自分が目撃者だったことを夫にバラし、「あんたも幽霊が見えることにしちゃったらいいじゃないの」と、幽霊商売を続けることを勧めた。元気になった大庭は、金縁の老眼鏡をかけた海坊主みたいな幽霊さんが見えると言い、トシエと一緒に、「幽霊が見える、見える」と町でふれ歩く。
显示全部
还没人写过短评呢